2017年03月20日

【ポーカー小説】エドワード・ゲイツにAAは要らない 前篇

ブラフ!
オールイン!
ブルゾン桃太郎
withB!!(特に意味はありません)

毎度ポーカープレイヤーに生まれて良かった拙者でござる。

皆さんはトーナメントにおいて、
「あの時降りておけば良かったなぁ」とか
「行っておけば正解だった」
なんて後悔した事があると思うでござる。

そして誰もが一度はトーナメントの最初に戻って
すべてのハンドをやり直したいと思った事が
あると思うでござる。

今回はそんな願いが叶ってしまった男の話。
いわゆるループものというヤツでござるな。

さて彼は無事トーナメントに優勝出来るのか?

まぁ暇があったら読んでいただきたいでござる。
それではどうぞ〜。

**********************************************

エドワード・ゲイツにAAは要らない




私は無言でAAを投げ捨てた。

 トーナメントは既に中盤に差し掛かっていた。
私の持ち点は三万点弱、アベレージが約十万点程なので結構なショートスタックだ。
そんな中で配られたAA。それはまさしく神の祝福、
天から降りてきた一本の蜘蛛の糸だと言えよう。
だがUTGのプレイヤーがリンプすると、私は無言でAAを投げ捨てた。

 ありえない。

きっと誰もがそう思うだろう、しかしそれにはもちろん訳がある。
私はそれが神の助けではなく、悪魔の誘いである事を知っているのだ。

私の後ろのプレイヤーは全員降りてBBはオプションチェック。
フロップが開かれた。

フロップ: ♠J  ♥7  ♣2

私はそのボードに見覚えがあった。
そして次にUTGのプレイヤーがBetし、BBのプレイヤーはコールする。
それも私は知っている。

UTGのプレイヤーは22を持っており、
フロップでセットを引いているのだ。
一方BBのハンドはKJ。
トップペアを降りられずにUTGに最大限のバリューを取られる事になるだろう。

何故そんな事が分かるのか? 

それは私がこの場面を経験するのは、これで三回目だからだ

一回目の私はここでトーナメントを敗退している。
僥倖とも思えたAAがUTGのセットにぶつかってしまったのだ。

二回目の時は少し躊躇したが、AAを諦めて様子を見る事にした。
すると起こったのが、今言った展開だ。

そして三回目。
三回目も私の目の前でまるで映画の様に、まったく同じ場面が繰り返された。

どうやら私が同じ行動を取れば、そっくりそのまま同じ事が繰り返されるらしい。
ならば焦る必要はない、チャンスはある。私はそう自分に言い聞かせた。


 私の時間が繰り返す様になったのは、丁度三日前の事だった。
と言っても時間が巻き戻っているので、日付の上ではまだ今日だが。

 私はミシガン州のレイクサイドヒルという田舎町で
観光客相手に細々と日銭を稼ぐ、しがないポーカープロだった。
 普段はキャッシュゲームがメインで、
時間がかかる割に金にならないトーナメントには殆ど参加しない。

 だがある日、隣町に新しくオープンしたカジノから
オープニングセレモニーの招待状が届いたのだ。
 それにはホテルの宿泊券と、そこのカジノで行われる
ポーカートーナメントの参加チケットが入っていた。

 優勝賞金は一万ドル。

 もちろん今ラスベガスで行われている世界大会とは
比べようもない小さな大会だ。
しかし有名プロ達はこの時期こぞってそちらに参加している、
ならば狙い目の様な気がした。
もちろん無料で参加出来ると言うのもいい。

私の思惑は的中し、トーナメントには有名プロどころか
私の様な素人相手に商売をしている同業者さえ見当たらなかった。
トーナメントに参加するのはしばらくぶりとは言え、
素人ばかりなら優勝するのはさほど難しくないはずだ。
私は密かに一万ドルの使い道に思いを馳せた。

しかし、いざ大会が始まると
私の元にはそれこそゴミクズの様なハンドしか入って来なかった。
手が入らなければ、ブラフするしかない。
しかしそうなると、相手が素人ばかりなのは却って厄介だった。

やつらは自分の手札しか見ていない。
そして一度ペアが出来たなら最後までコールし続ける。
例えそれが2のワンペアだったとしてもだ。

結局私の目論みははずれ、トーナメント中盤で
あっさりAAが負けて、そのまま敗退となった。
私は小さく舌打ちをし、そしてこんな素人ばかりの大会でも
勝ちきれない自分のふがいなさを呪った。

「ゲイツさん、もうお帰りですか?」

ふて腐れてカジノを去ろうとした時、初老の男から声をかけられた。
このカジノを取り仕切っているフロアマネージャーだ。
大会に先立つオープニングセレモニーで挨拶をしていたのを見た。

しかし私は以前、この男をどこかで見た事がある様な気がしていた。
ただそれがいつだったのか、どこでだったのか、さっぱり思い出せない。

「久しぶりにトーナメントに参加して少し疲れたみたいだ。
一旦部屋に戻って休んでからまた出直すよ」

そう言い残して、私はカジノを後にした。


部屋に戻ると、私の体を泥の様な疲労感が覆っていた。
最近はいつもそうだ。
テーブルについている時はまだましだが、
一旦テーブルを離れると立っているのもしんどくなる。

そのままベッドの上に倒れ込みしばらく動けずにいた。
体はだるく、頭の中はもやがかかった様にはっきりしない。
それなのにいざ眠ろうとしてもなかなか寝付けないのだ。

私は常備している睡眠薬を取り出し、
医者に言われた三倍の量をバドワイザーで流し込んだ。




(エディ、大事な話があるの)
(なんだいあらたまって?)

(もし、もしもよ、あなたさえ良ければ父の会社で働いてみない? 
新しくお店を出すので人手が足りないんだって)
(おいおい止めてくれよ俺はプロのポーカープレイヤーだ。
ポーカー以外の仕事をする気なんてないよ)

(エディ・・・)




目が覚めると真っ暗な部屋の中にいた。
部屋のデジタル時計は、AM11:00を表示していた。
私の仕事時間はいつも夜からなので、
昼間は部屋に厚いカーテンを引いて日の光が一切入らない様にしている。

あれだけ睡眠薬を飲んだのにも関わらず、
結局眠りにつけたのはもう明け方近くになってからだ。
正味三時間くらいしか寝れていない。
体は夕べと同じ様に重たいままだ。

しかしこれ以上ベッドの中にいても、再び眠りが訪れる事はなさそうだった。
私はベッドからのろのろと這い出すと、
手探りでバッグの奥に隠しておいたを取り出し、鼻から吸った。

するとようやく脳に血が流れ始めたのか、頭がすっきりし始めた。
最近はこれなしでは、起き上がる事も出来ない。
私は軽くシャワーを浴びて身支度を整えると、再びカジノへ向かう事にした。

 昨日のトーナメントは散々な結果だったが、
私の本業はあくまでキャッシュゲーム。むしろここからが本番だ。

 昨日見た所客層は悪くないし、
なにより同業者の姿をまったく見かけない。
 最近はずっと調子が悪く、そろそろ貯金も尽きかけていた。
ここらでしっかり稼いでおかないといずれホームレスの仲間入りだ。

 そんな思いでカジノに足を踏み入れると、
私の目に不思議な光景が飛び込んできた。

カジノではちょうどオープニングセレモニーの真っ最中だったのだ。

「・・・それではこの後、オープン記念ポーカー大会と、
バカラ大会が行われます。皆様ご存分にお楽しみ下さい。
シャッフル&ディール!」

 フロアマネージャーがそう宣言すると、場内は大きな拍手に包まれた。
 私は強烈なデジャブに襲われた。

 昨日も私はそのセレモニーに参加していた。
マネージャーのセリフも一言一句まったく同じだ。
二日連続で同じ開会式をするなんて事があるのだろうか?

腕時計のカレンダーを確認して見ると、

『七月四日』

独立記念日を間違えるアメリカ人などいやしない。
それは確かに昨日だった。

私は上着の胸ポケットを探った。
昨日はそこに送られて来たチケットを入れていた。
今はもう何も入っていないはずだ。

だが私の指先に硬い紙の感蝕があった。

恐る恐る取り出すと、それは間違いなくポーカー大会のチケットだった。

(それでは昨日のあれは・・・夢?)

それとも今こうして見ているのが夢なのか。
いくら考えても答えは出ない。
結局私は考えるのを止めにした。どちらにせよやる事は一つだ。

私はチケットを握りしめると、
参加手続きをしにカウンターへ向かった。

【三回目】

♥8 ♦2

AAをフォールドした少し後、私の元にこのハンドが配られた。
普段なら即座に投げ捨てる様なクズハンドだ。
だが、私はブラインドの5倍をレイズした。

BTNのプレイヤーがこれをコール。
フロップが開かれた。

フロップ:♠8 ♣2 ♣K

私のクズハンドはたちまちツーペアとなった。
当然だ、このフロップは前回既に経験している。

私の残りスタックはもうわずかだ。当然オールインをする。
BTNのプレイヤーは少し悩んでコールした。
BTNのハンドはKJだ。

ターン:♠8♣2♣K ♦J

ターンで相手もツーペアとなった。ツーペア同士だが、
もちろん向こうの手の方が強い。
ガッツポーズをするBTN。だが私には余裕があった。

リバー:♠8♣2♣K♦J ♥2

リバーで私はフルハウスを完成させ勝利した。
BTNのプレイヤーには気の毒だが、もちろんこうなる事は分かっていたのだ。
これでスタックは倍になった。

だがそれ以降あまりいいハンドが入らなかった。
残り二十人程になった所でAJがKKに負け、
三度目の正直とはいかず私はトーナメントを敗退した。

【4回目】

AJは回避するものの、数順後に来たAKが
ランナーランナーで相手にフラッシュを引かれ敗退。
十八位。

【6回目】

AKをスルーした後にQQが入り、フロップセットとなった。
これでスタックは少し回復するも、その後が続かない。
なんとかファイナルテーブルに進出する事が出来たが、
そのまま九位終了。

「ゲイツさん、もうお帰りですか?」

もう何度この言葉を聞いた事だろう。
私はだんだん、これが夢なのか現実なのか
分からなくなって来ていた。

かれこれ一週間近くもの間、
まったく同じトーナメントを繰り返しているのだ。
頭がおかしくなりそうだった。

順位は少しずつ上がって来ている。
この調子なら後何回か繰り返せば、優勝する事が出来るだろう。

だが、それで終わりになるのだろうか?

優勝して次に目が覚めた時、明日になっているとは限らない。
また今日が始まっている可能性だってある。

それは考えるのも恐ろしい事だった。
もしそうなら、私はこのトーナメントを永遠に繰り返さなければならない。

私は激しく頭を振った。
いや大丈夫だ。
優勝すれば、優勝さえ出来れば今日は終わる。
きっとそうに違いない。
私は祈る様に自分に言い聞かせた。

「どうしたんです、ずいぶんとお疲れのご様子ですね?」

フロアマネージャーがそう言った。
その言葉に私は違和感を覚えた。
そう、それは初めて聞くセリフだったからだ。

突然の事に私は呆然と目の前の男の顔を見た。
やはりその顔には見覚えがある。

「失礼、以前どこかで会ったことがありましたか?」

私は胸の奥につかえていた疑問を口にした。

「お忘れですかゲイツさん。
私は以前レイクサイドヒルに住んでいたのですよ。
奥様のケイトさんとも良く教会でご一緒させていただきました」

男はにこやかにそう答えた。
まったく記憶にないが、どうやらこのフロアマネージャーはかつての隣人だった様だ。
もう何年も教会には顔を出していないが、
通りですれ違った事くらいはあったかも知れない。

「ではもしかしてこの招待状はあなたが?」

フロアマネージャーは頷いた。

「奥様から、あなたがポーカーをしている事はお聞きしていました。
それで差し出がましいとは思いましたが、招待状を贈らせていただいたのです」

そうだったのか。

有名プロならいざしらず、無名の自分の所に
何故招待状が届いたのか不思議だったが、
それはこの男が手配してくれたものだったのだ。

「奥様はお元気ですか?」

男の言葉に私は少し口ごもった。

「・・・それが女房とはもう一緒ではないのです」

そう言うと男の顔が曇った。

「ちょうど一年程前の事です。くだらない事でケンカをしましてね、
怒って家を出て行ってしまったのですよ」
「そうでしたか、それは失礼な事をお聞きしてしまいました」
「いえ、いいんです。いずれこうなる気はしていました。
彼女とはしょせん住む世界が違っていたんです」

妻のケイトはいわゆる金持ちの令嬢だった。
会った事はないがケイトの父親はいくつもの会社を経営する実業家だったはずだ。

付き合い始めた頃、私が仕事から(もちろんポーカーだ)帰ると、
彼女が真っ赤に目を腫らしていた事があった。
理由を尋ねると、私の職業の事で両親に猛烈な反対をされたと言うのだ。
今思えばあたりまえの話だが、若かった私はそれに激しい憤りを覚えた。

彼女の両親も私がメージャーリーガーや、
NFLの選手ならきっとそんな事は言わなかっただろう。
しかし私にしてみれば、ポーカーこそが至高のゲームであり、
それらのプロスポーツになんら劣る所があるとは思っていなかった。

とは言え何の実績もない駆け出しのプロがいくらそう主張しても、
彼女の両親を説得する事は出来ないだろうし、またしたくもなかった。

ならば実力で納得させるしかない。

私は彼女を連れて、半ば駆け落ち同然で街を出た。
そして誰もが知る有名なトッププロになって改めて両親に挨拶に行こうと決意した。 

結局その機会は訪れないままだったが。

申し訳なさそうな顔をするマネージャーに別れを告げて、
私は再び体を引きずる様にして部屋へと戻った。



(エディ、またモーガンさんにお金を借りたの・・・?)
(たいした事ない、すぐに返せる額さ。
最近ちょっと調子悪くてね。そんな時もあるさ)

(エディ、私ね・・・)


後編へ続く

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いかがだったでござるかな?

後編はまた明日にでもアップするのでお楽しみに。

それでは今宵はこれまで、次回まで御免!!

posted by 桃太郎侍 at 18:56| Comment(0) | ポーカー小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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