2017年04月14日

【ポーカー小説】死のストレートフラッシュ 前篇

てるみくらぶが破産して、
アメリカに一人取り残されてしまったんですよ。

日本に帰る飛行機代もなくて、
一か八かでポーカーをやってみたんです、
そしたら運よく勝ってしまって。

ええ、それがポーカープロになったきっかけです。

なんて人が一人くらいはいるかも知れない今日この頃、
毎度拙者でござる!

今回は拙者が趣味で書いているポーカー小説を
性懲りもなくアップするでござるよ。

「命を賭けたポーカー勝負に負けた男。
しかし彼のラストハンドはストレートフラッシュだった!?」

それはいったい何故なのか、というお話でござる。
ジャンルとしては前回と同じくホラー&サスペンス。

拙者がこのての好きだから、どうしてもこんな感じに
なってしまうでござるな。

ではお暇な方がいらしたら、ぜひ読んでいただけると
拙者感謝感激、ローリング全裸して喜ぶでござる。

それではどうぞ〜

***************************************************

死のストレートフラッシュ(前篇)


「なぁエイジよ、ポーカーで一番強い役ってのは何だ?」

カウンターの向こうからその男、ナマズは唐突(とうとつ)に話かけてきた。
俺はグラスを磨く手を一瞬止め、「またか」と思った。

ナマズは本名を中津(なかつ)と言う。下の名前は知らない。
口の両端にちょろりと髭を生やしており、それが元でナマズと陰で呼ばれていた。

一見何気ない世間話のようだが、ナマズがこうやって話を振ってくる以上
ただの日常会話とは思えない。

恐らくは「事件」に関係のある話なのだ。

ナマズは、この辺り一帯を管轄する警察の刑事をしている。
そして担当している事件が行き詰まると、いつもこうして俺の店に
(と言ってもただの雇われ店長だが)やって来るのだ。

「それはもちろんストレートフラッシュでしょうね。
中にはジョーカーを加えたファイブカードを最強とする事もありますが、
一般的には少数派です」

俺が事件の事には気づかないフリをしてそう答えると、
ナマズは眉間に皺を寄せて腕を組んだ。

「やっぱりそうだよな。しかしそうなると辻褄(つじつま)が合わないんだ。
う〜ん、どうしたものかな・・・」

わざとらしい独り言。

俺は仕方なく、話に付き合う事にした。
正直警察関係者に長居されると客足が落ちるのだ。
現にさっきも扉を開けた酔客がカウンターにナマズの姿を確認すると、
急に回れ右をして帰っていった。
さっさと話を終わらせて、迅速にお引き取り願いたい所だ。

「何かあったんですか?」

俺がそう尋ねると、ナマズは嬉しそうに眼を輝かせた。

「これはあくまで例えば、の話だからな・・・」

そう言って事件について話し始めた。


「先週、会社社長のAが自殺した。
住んでいたマンションの屋上から飛び降りたんだ」

俺はその話に心当たりがあった。
ナマズがAと言っているのは恐らく山崎伸也(やまざきしんや)の事だ。
山崎のマンションはこの店から車で5分もかからない所にある。
常連と言う程ではなかったが、この店にも何度か来た事がある。

「自殺の原因は何だったんです?」
「Aの会社は経営難に陥(おちい)っており、
それを苦にしての自殺だろうと言うのが当初の見立てだった」

山崎は都内にいくつもの居酒屋を経営しており、
何年か前に従業員にメイドやアニメのコスプレをさせた店がヒットして
急に羽振りが良くなった。
当時は毎晩のように女性を連れて、この界隈(かいわい)を飲み歩いていたものだ。

しかし最近はまったく姿を見かけなくなっていたが、
そんなにひどい状況になっていたとは。

「しかし捜査を進めて行くうちにな、おかしな事実が浮かび上がって来た」

Aの保険金の受取人が、Bと言う別の実業家になっていたのだとナマズは言った。

「じゃ、保険金目当てにBがAを殺した可能性もある訳ですか」

「その可能性もない訳じゃないが、Bにはアリバイがある。
Aが自殺した夜にはBは自分の会社に居た事が目撃されている。
だがそれを最後に、Bは行方不明になっているんだ。
犯人とは言い切れないが、誰がどう考えても怪しい」

ナマズがBを調査した所、Bの会社もかなりの額の借金を抱えている事が分かった。
動機としては十分だ。

(Bか、Bとはいったい誰だろう?)

俺は山崎と一緒に店を訪れていた数人の顔を思い浮かべた。

「だがここに来て事態は思いも寄らない展開になった。
昨日ウチではもう一人の重要参考人Cにお越し頂いてな、
ちょっとばかしお話を伺(うかが)ったんだ」

お越し頂くなんて言ってはいるが、
恐らくそれは任意同行と言うやつだろう。
話を伺(うかが)うと言うのも要は取調べだ。

「でCが言うには、二人は賭けをしていたと言うんだ」
「賭け?」
「そうだ、二人は命を賭けた勝負をしたんだ。ポーカーで」

Cが語ったのはにわかには信じがたい話だった。

「AとBは学生時代からの親友だ。そして羽振りの良かった頃に、
ちょっとした遊びでお互いに保険金を掛け合っていたそうなんだ。
調べると確かにBも保険に入っており、その受取人はAになっていた」

冗談のつもりで入った保険だったが、事業が行き詰った二人はそれに目を付けた。
そして二人とも共倒れになるくらいならと、
勝負をして負けた方が死ぬと決めたのだ。
そうすれば勝った方は保険金でやり直す事が出来る。

その結果、勝負に負けたAが自ら命を絶ったと言う事だった。

「その場合、Bは何かの罪に問われるのですか?」
「いや、自殺したのはあくまでAの自由意思だ。
だがCの言う事を100%信じる訳にも行かない。
本当はBが誰かを雇って、Aを殺させたのかも知れないからな」

警察はAのマンションを調べた際に、勝負に使われたカードが
そのままテーブルの上に残っていたのを確認していた。

「おっとどうも飲み過ぎたみたいだ、ポケットから何かを落としてしまったぞ」

ナマズは臭い演技をして、懐から三枚の写真を取り出した。
そんな事をしなくとも店の中には俺とナマズの二人しかいないのだが、
ナマズにはナマズなりの筋の通し方というのがあるのだろう。

俺はその写真を偶然覗きこんだ。
一枚目はどこかの部屋の中の写真だった。

部屋の真ん中にはテーブルと椅子があり、
そしてそのテーブルの上にはドリンクのグラスと、カードとチップが散乱していた。
残り二枚の写真にはそれぞれ5枚のカードが映っていた。

一枚目は、♥2♣3♦4♦7♣7

二枚目は、♠3♠4♠5♠6♠7

「成る程、死んだAは7のワンペア。
Bの方はストレートフラッシュで勝ったと言う訳ですか」

俺がそう言うとナマズは首を振った。

「それがそうじゃないんだ。二枚目が死んだAの手札なんだ」

ここで俺はやっとナマズが何を悩んでいるのかを理解した。

Aの手札はポーカーでは最強の役、ストレートフラッシュだ。
もちろん7のワンペアなどとは比べ物にならない位強い。
なのに負けて自殺したのはAの方だ。確かにそれはおかしい。

「こっちがAの手札だと言うのは彼女の証言ですか?」
「ああ、そうだ。それにテーブルのそっち側にタバコの灰皿が置いてあった。
Bはタバコを吸わないからな。
ん待てよ、どうしてお前Cが女だって分かった!?」

「グラスですよ」
「グラス?」

「ほら写真のここにグラスが三つ映っている。
その内二つはウイスキー用のロックグラスです。
しかしもう一つのグラスはカクテルグラスで、しかもストローが差してある。
男性がカクテルを飲まない訳ではないですが、
可能性としては女性の方が高いでしょう?」
「成る程、伊達に長くバーテンはやってないってか」

それだけではなかった、以前死んだAこと山崎がこの店に来た時
二人の連れがいた事を俺は思い出していた。

一人は西条仁(さいじょうじん)と言うレストラン経営者と、
もう一人は確か宮田恵子(みやたけいこ)という女性だった。
宮田恵子の方は何をしているのかは分からないが、
黒髪のちょっとエキゾチックな感じのする美女だった。

山崎がここに来る時はいつもこの三人が一緒だった。
BとCと言うのはその二人の事ではないかと俺は推測していた。

「まぁそれについては何とも言えんが、Cがその場にいたのは確かだ。
それだけじゃない、二人の勝負に際してカードを配るディーラー役をしていたんだ」
「さすがに命が懸かった勝負ですからね。
自分達でカードを配るのは問題あるでしょう。
中立の立場の人間が必要でしょうね」

「最初Cはもちろん断ったそうだが、二人があまりに熱心に頼むので
仕方なく引き受けたそうだ。ただしCはポーカーに関してはまったくの素人だ。
ただ言われるがまま、カードを配っただけらしい」

「Cはこの最後の勝負がどんな感じで行われたのか、証言したのですか?」
「ああ。ゲームの流れはこうだ」

まず二人に五枚ずつカードが配られた。
そしてAが一枚カードをチェンジし、Bも一枚チェンジした。
次にAがベットするとBがそれをレイズした。

「それに対してさらにAがオールインしたのだそうだ。
まぁストレートフラッシュなら当然だな」
「それをBはコールしたのですか」

ナマズは頷(うなず)いた。

「だがカードが開かれると、Aはがっくりとうなだれて
『俺の負けだ。約束は明日の夜に必ず果たす』と言ったそうなんだ。
な、おかしいだろう?」

ナマズが首を傾げるのも無理はない。
ポーカーによっぽど詳しくなければ、この謎は解けないだろう。

「なんだその顔は、何か分かったのか?」
「半分くらいですかね」
「なんだよ分かったんなら早く言え」

「その前に中津さん、Cは今どこにいます? まだ警察ですか」
「いや、大方の取り調べが終わった時点で解放されたが」
「もう一度Cを警察に呼び出した方がいいかも知れません。
きっとCはまだ隠している事がありますよ」

(後編に続く)

************************************************

さていかがだったでござるかな?
皆さんはこの謎が解けたでござるかな?

続きは明日の夜にまたアップするでござるので、
お楽しみに〜。

それでは今宵はこれまで、次回まで御免!!






posted by 桃太郎侍 at 22:56| Comment(0) | ポーカー小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。